全日本大学選手権大会 決勝 vs関西学院大学 〜サッカー親父のラクロス観戦記〜

どんなスポーツでも決勝戦だけは全く別物とよく言われている。考えてみればこの2年と数か月、慶應女子ラクロス部は公式戦で負けたことがない。苦労しながらも飛躍的な成長を遂げ、2018チームは全勝で勝ち上がってきた。そんな慶應2018チームにとってもこの決勝戦は別物となってしまった。決勝戦には常に魔物が宿っている。。。

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■201811月25日:関西学院大学戦@駒沢陸上競技場 <慶應2-5関学>

3連休の最終日、晴れ渡る青空の下、駒沢競技場では屋台のフードフェスティバルや子供のダンス大会が行われ、多くの人で賑わっていた。午前中の男子決勝では早稲田大学が16-2で京都大学に圧勝し、その余韻に浸った早稲田応援の人々が観客席からも湧き出てきた。昨年の女子決勝・同志社戦での圧勝もあり、試合会場にはどこか楽勝ムードが漂っていた。

最初のドローを石田百伽(#51)が思い通りの方向に出し、伊藤香奈(#73)の体幹の良さで低めのボールを救い上げ、慶應ボールにして、ラクロス全日本大学選手権大会は始まった。出だしはいつもと変わらないポゼションで慶應の各選手の動きも良い。開始2分で清水珠理(#58)のフリーシュートは相手が体を寄せてシュートが打てずにダウンボール。関西学院ボールとなりゴール前まで持っていかれるも、大沢かおり(#28)のインターセプトでボールを奪い返す。このまま一進一退の攻防となり、緊迫した膠着状態が続く。あっという間に10分が過ぎていた。

そんな中、ゴーリーの大沢がボールを持った時のフォーメーションに驚きを隠せなかった。関西学院は、完璧なまでのマンツーマンで来たのだ。完璧とは、ミディやアタックにフィードするロングボールだけでなく、ディフェンス陣に対しても相手のアタックが完璧なマンツーマンでボールの出し先を封じていたのである。青山学院が前線からのライドでプレッシャーをかけるケースは見られたが、関東ではこのような完璧なマンツーマンのチーム、そして王者慶應にこのような作戦で挑んでくるチームはなかった。フィールドにいる選手たちは完全に面を食らっていただろう。とにかく背後霊のように付いてくるマンツーマンの相手に対して、自分たちが動いてボールをもらわないとパスが通らない。仮に一人の選手が動き良くて受け取っても、チームとして連動した動きがなければ、そこでパスの流れはThe end。大沢にボールを預けて全体を押し上げ、攻撃の起点を前にする戦術が持ち味の慶應に対して、このマンツーマンは後半も効いていた。パスコースがない状態が続く大沢は、一度だけリストレ付近まで自分で持ち上がったことがあった。しかし、そこまで行ってもマンツーマンは徹底しており、前線や横にもパスコースがないと見るやボールをディフェンスに戻して、クリースに戻ってしまった。それ以降、大沢が上がることはなかった。

前半開始して10分で両チーム初めてのシュート。関西学院のフリーシュート。これは枠を外す。しかし、その3分後に2度目のフリーシュートを与えてしまった。関西学院の(#15)がシュートをすぐに打たずに右に流れ、下に打つと見せて高めに打つ技ありのシュートで先制する。さすがに大沢でも止められない。慶應も負けてはいられない。次のドローを石田が見事に上げ、清水が取る。いつものように反撃の流れかと思った矢先、パスが繋がらず相手ボールになる。何かが違う。また、時折見られる関西学院のランに慶應の選手が2-3人引き連られるケースが気になる。そして、最初のゴールから3分後に再びピンチは訪れる。チェイスで慶應ボールになったにもかかわらず自陣ゴール前への不用意なパスをして、このボールを受ける際に反則を取られた。このフリーシュートもシュートをすぐに打たずに横にいる関西学院の選手にパスをして、そのまま2点目を決められた。

一方の慶應は、友岡阿美(#32)が前半18分過ぎにシュートを打つまで全くシュートが無かった。打てなかったのか、打たなかったのか。前半20分に得た絶好のフリーシュートのチャンスでもシュートを打たずに、バックパスをしてしまった。誰かが「外してもいいから思い切りシュートして!」と声を掛けて欲しかった。慶應はどこかで完全に消極的で丁寧なラクロスに陥っていた。2点差の重圧が選手に襲いかかっていた。選手は焦り始めていた。そのままホイッスル。前半終了。前半0-2.何度となく見てきたスロースターターの慶應。ただ一つ違うのは2点差での折り返し。2点差は、相手の心に余裕ができ、平常心を保つサイコーの薬となる。

後半最初のゴールは非常に重要になる。1点差になるか3点差か。開始のドローボールを取られ開始数十秒で関西学院に最初のシュートを打たれる。後半もまだ関西学院のペースで試合が続くと思われたその瞬間、野々垣眞希(#81)が自陣でボール奪取して右サイドを一気に駆け上がり、そのままトップスピードで駆け上がる伊藤へパス。スピードを緩めずに、ゴール前でフリーになった吉岡美波(#72)に連動したパスが渡る。吉岡は落ち着いてグラウンドに叩き付けるようなシュートで、ついに慶応待望の1点を返す。後半最高の滑り出しで1-2に。

観客席では、これまでの鬱憤を晴らすようには今年一番の大声での「若き血」。慶應応援席のボルテージは一気に上がる。その「若き血」が終わるか終わらないかの後半3分、ドローボールから何本かパスを繋がれ、最後は関西学院(#10)に20メートルくらい勢いよく走り込まれて、そのままトップスピードでシュート。相手ゴールが決まってしまった。反撃の狼煙が上がった直後の失点は、相手に再び2点差という薬を与えて勢いを取り戻させてしまった。痛い時間帯での失点だ。但し、まだ後半開始3分。時間はまだ十分にあった。

後から思えば、相手が息を吹き返し、関西学院の大応援団が応援歌を歌う中、心のどこかで意気消沈する慶應の選手たちを落ち着かせるために、ここでタイムアウトが欲しかった。百戦錬磨の大久保コーチも一瞬の躊躇いがあったのか、それとも終了間際の接戦を予想してタイムアウトを温存したのか。先程の得点による関西学院の応援歌が響く中、そのまま試合は継続された。そして3点目からたった1分後の後半4分に、今度は長いパスを繋がれ、畳みかけるように追加点を奪われてしまった。スコアは1-4。結果的にはここが1つ目のターニングポイントになる。

2つ目のターニングポイントは、西村沙和子(#33)のジャンピングシュートが無効になったところ。後半12分。タイムアウトからのリスタートで、西村がそのままゴール裏に回り込み、そこから回転して最後はジャンピングシュート!ゴーリーの左肩越しにボールが突き刺さり、再び息を吹き返す2点差に思われた。が、同時にホイッスルが鳴った。シュートの瞬間に、ゴール前で相手選手ともつれて倒れた反則を取られ、ゴールが取り消されてしまった。残り時間12分で2点差であれば、石田のゴールも活きてきただろうに。普段ではあり得ない反則であったが、これも慶應の焦りから来るものであったことは間違いない。

この試合は、残念ながら関西学院の戦術に慶應が嵌ってしまった。リーグ戦と違い、一発勝負のトーナメント戦では、一流のサッカー監督は戦い方を変える。チャンピオンリーグのようなトーナメント戦では必ずと言っていいほど、この一発勝負の戦術対決になる。まるで、じゃんけんのように、相手は普段グーを出すけど、トーナメント戦なので、チョキで来る。と思うので、その裏をかいてこちらはグーを出す。というように、まるで将棋や囲碁のように思考を繰り返す。最終的に強いチームは、常にいくつかのオプションを持ち、試合開始から10分くらいで相手の出方を見て、チームとして試合中に戦術を修正していくのである。それでも、上手く行かない場合には選手交代をして、監督からの意思伝達を見える形にする。

今回、関西学院が選んだ戦術は、①マンツーマンの徹底、②自陣でのキーマン対策、③フリーシュートはワンアクション入れる、だったと思われる。

マンツーマンから奪ったボールに走りを入れて慶應のライドを集めて、ギリギリのタイミングでパスを出す。パスをもらう選手は常にスペースに走り込む。常にボールを持つ周りの選手が動く、といった試合運びだ。この試合は、その全てが嵌った。守りの走りと攻めの走りでは疲れ方が全く違う。この試合を通して、慶應は常に相手を追いかける守りの走りで、個々人の動きも徐々にキレが無くなっていた。一方で、慶應同様によく鍛えられている関西学院は、攻めの走りのため、試合が進むごとに益々動きが良くなっていった。

サッカーでもマンツーマンの戦術を取るチームはある。基本的にマンツーマンの最も苦手なプレーは「速攻」である。各人が自分のマーク相手を見つけてそこに辿り着くまでには時間が必要でGapが生まれている。その間にパスを繋いで、全員が連動して動くと混乱するのである。後半2-4になってから何度となく、慶應がゴールに向かいシュートを畳みかけるシーンが見られた。シュートまで持ち込む回数が飛躍的に増えたのはおそらく攻めに時間を掛けなくなったからだろう。ただその理由が意図したものではなく、慶應の焦りから来るものだったように見えたのが残念で仕方がない。

また、キーマン対策として、西村がシュートエリアに入ったら複数人でコースを塞ぐ。伊藤が走ったらスピードを落とさせる。友岡が持ったらキラーパスを出させないように体を寄せる。大沢が持ったら(大沢以外の)マンツーマンの徹底。そして、フリーシュートが素直では大沢に防がれるので、必ずワンアクション入れる。といった感じ。

一方で慶應にとっての光明もあった。当然スカウティングはされていたであろうが、野々垣の走りと、そこからのダイレクトシュートは関西学院に脅威を与えていた。どんなスポーツでも対人のスポーツであれば対峙して初めて相手との力関係や走りのスピードが体感できる。DF登録で2年生、走り上がってきてもどこかでキーマンにパスをするはず、と考えていた関西学院が慌てていたのも無理もない。事実、自陣から上がり2度もシュートまで直接持ち込んだり、慶應の最初の得点も野々垣のオーバーラップからの流れであった。

気付いてみれば、関西学院の5つのゴールは全員違うメンバーのゴールであった。誰でも得点できるチームは非常に強い。サッカーも同じである。全員が得点を取る意思があり、強引にでもシュートを打たなければ、点は入らない。試合が終わって表彰式を見ながら、綺麗なパスワークの慶應と貪欲にゴールを狙っていた関西学院が対照的に脳裏に焼き付いていた。まるでハーフタイムの慶應チアが華麗に舞い、関西学院のチアが武骨に組体操で魅せるように。

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今回の敗戦は、更なる成長へのステップだ。トーナメント戦で負けたにもかかわらず、再びチャンスがある。真の日本一になるチャンスがある。2週間後に控える大阪での社会人1位チームとの対戦。準決勝。これまで僅か数週間で成長してきた慶應女子ラクロス2018チームが再び成長する機会をラクロスの神様から授かった。どう活かすかは、選手個々人のみならず2018チーム全員が、今までと同じでなく、これから2週間で少しでも何か変わったか、何か変わるように努力したか、その集合体である2018チームとして何か変えたか、変えようとしたか、が問われているように思えてならない。敗戦という事実から目を背けては成長出来ない。

「機会があるのは能力のある証拠」とサッカー親父はよく言う。日本一になる機会がある慶應女子ラクロス2018チームの真の成長を、大阪の地で京都の地で、そしてこの目で見届けたい。

櫨本 修(記)=櫨本 美咲(#62)父

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※注釈

本文は、11月26日に一気に書き下ろしたものであり、事実に反する表記や誤認がありましたらご容赦頂きたい。

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